目次

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  1. マネーロンダリング(資金洗浄)とは何か?
  2. 【結論】現金(法定通貨)と同様にマネーロンダリングに活用されうる
  3. ビットコインがマネーロンダリングに使用されることへの見解【英国編】
  4. ビットコインがマネーロンダリングに使用されることへの見解【日本国内編】
  5. 日本政府によるマネーロンダリング対策
  6. マネーロンダリング対策のための国際的な機関
  7. 匿名性通貨とは?【DASH/MONERO/ZCASHの概要と特徴】
  8. まとめ
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仮想通貨取引所コインチェックからハッキング被害にあった約580億円分もの仮想通貨「NEM(ネム)」の内15%にあたる90億円分のNEM(ネム)が、匿名性の高い「ダークウェブ」というサイトを通じて他の仮想通貨に交換されるといったニュースは記憶に新しいのではないでしょうか。

こうして盗まれた多額の仮想通貨に関しては小分けにして移動・交換を繰り返すことで、退勤の移動の特定を難しくしているのではないかとの見方が強まっています。

そこで読者のみなさんの中には、

「ビットコインは本当にマネーロンダリング(資金洗浄)に使えるの?」

「なぜマネーロンダリング(資金洗浄)に使えると言われているの?」

と疑問に思われている方も少なくはないはず。

そこで本記事では、仮想通貨がマネーロンダリング(資金洗浄)に使用される可能性や、それに対するいくつかの見解、また、関連する情報として匿名通貨についても説明していきます。

マネーロンダリング(資金洗浄)とは?

そもそも、マネーロンダリング(資金洗浄)とは何でしょうか?

意味・目的・方法の3つの観点から簡潔に見てみましょう。

  • 意味:資金洗浄
  • 目的:犯罪によって得られたお金の出所を分からなくするために行う
  • 方法:金融機関口座などを転々として送金を繰り返す(一例)

日本の外務省の公式ホームページには、マネーロンダリング(資金洗浄)が国際社会の脅威になっており、国として対策に取り組むことの必要性が述べられています。

 資金洗浄(マネーロンダリング)とは,違法な起源を偽装する目的で犯罪収益を処理することを意味します。組織犯罪は国際社会の脅威となっており,その犯罪収益はさらなる組織犯罪のために運用されることから,我が国としても,組織犯罪防止・撲滅のため国際的に協調し,資金洗浄(マネーロンダリング)対策に取り組むことが不可欠です。

外務省ホームページ>国際組織犯罪に対する国際社会と日本の取組 > 資金洗浄(マネーロンダリング)

ビットコインがマネーロンダリングに活用されうるのかという疑問に対する答えとしては、現金(法定通貨)と同様にマネーロンダリングに活用されうると言うことができます。

言い換えると、現金もビットコインも特性が異なる通貨として、それぞれ特有のマネーロンダリングの方法に活用されうると言うことができます。

それでは、今回の記事のテーマでもある「ビットコインにおけるマネーロンダリング問題」を正しく理解するための前提知識として、まずは以下の3点を理解しましょう。

  • 現金とビットコインは、それぞれ異なる特徴を持つため、マネーロンダリングへの活用の仕方も異なる
  • 現金は、マネーロンダリングを防ぐための環境整備がビットコインよりも進んでいる
  • 追跡性のあるビットコインは、現金が抱えるマネーロンダリングの課題を解決しうる

それぞれについて詳しく見ていきましょう。

現金とビットコインは、それぞれ異なる特徴を持つため、マネーロンダリングへの活用の仕方も異なる

現金は匿名性が高く使用履歴が残らないため、手渡しなどの直接的な取引なども交えると、資金の移動を追跡をしづらくすることも可能であり、それゆえにマネーロンダリングに活用されることもあります。

これは追跡性の高い(※1)ビットコインにおいては、取引所などの換金するポイントで顧客情報の把握が徹底されさえすれば、資金決済の流れを監視することができます。

一方で、ビットコインは国境を超えた資金輸送が容易にできるという点で、現金とは異なるマネーロンダリングへの活用がされる可能性があります

このように、通貨の特性に応じてマネーロンダリングへの活用のされ方も変わっており、ビットコインは資金移動の容易性を利用したマネーロンダリングの方法に使われる可能性があるという固有の問題があります。

(※1)ビットコインの追跡性と匿名性が高いとは?

ビットコインの追跡性が高いというのは、ビットコインがブロックチェーン上に「どのアドレス(銀行でいう口座のようなもの)からどのアドレスにいくらの資金が移動したのか」といった取引データを公開していることにより、第三者が資金の流れを把握できる点にあります。

しかし、ここで注意しておきたいのは、「誰がどのアドレスを所有しているのか」については、ブロックチェーン上に公開されていないという点にあります。

これがビットコインは匿名性が高いと言われる理由であり、誰から誰に資金が移動したのかを追跡することは、取引所などの換金ができるサービスやウォレットサービスを提供している事業者が、顧客情報の取得・管理をすることなしでは実現されません。

現金(法定通貨)は、マネーロンダリングを防ぐための環境整備がビットコインよりも進んでいる

こちらは通貨自体の性質によってマネーロンダリングが引き起こされるという話ではなく、通貨を取り巻く環境によってマネーロンダリングが引き起こされうるという話です。

現金(法定通貨)はマネーロンダリングを防ぐために、各国で銀行ネットワークが形成され、送金履歴の追跡をできるようにするための、取引発生時の各種確認(顧客情報の確認など)・管理などが法律によって義務化しております。

銀行で口座を開くときに、銀行印や個人確認が必要なのはそのためにあります。

しかし、そういった体制が整っていないビットコインにおいては、どのアドレス(口座)からどのアドレス(口座)に資金が動いたのかが把握できたとしても、誰から誰に資金が動いたのかは把握することができません。

つまり、現金が銀行ネットワークによって、どの顧客の口座からどの顧客の口座に資金が動いたのかを追跡できるように、ビットコインや仮想通貨に関しても、どの顧客がどのアドレス(口座)を所有しているのかを把握するためのチェックポイントが必要です。

現在は各国で仮想通貨取引所に対してKYC(Know Your Customer)といった顧客情報の確認を義務付けはじめており、取引所のような換金の出口となる機関でリスク管理がされる方向で動き始めているものの、まだマネーロンダリングを防ぐための顧客管理の徹底などが取引所等でされていないこともあり、現金と比べてマネーロンダリングへの活用が懸念されています。

追跡性のあるビットコインは、現金が抱えるマネーロンダリングの課題を解決しうる

ビットコインはその資金移動の容易性や取り巻く環境の整備が整っていないがために、マネーロンダリングに活用されうると説明してきましたが、一方で現在の現金によるマネーロンダリングなどの課題の解決にも期待がされています。

前述したように、ビットコインは取引所などの換金するポイントとなる事業者が、どの顧客がどのアドレス(口座)を所有しているのかを確認・管理しさえすれば、誰から誰に資金が移動したのか追跡することができます。

この環境が整備されると、ビットコインにおける資金移動の流れを追跡することができるため、匿名性が高く使用履歴が残らない現金が抱えていた、不正蓄財や脱税、マネーロンダリングといった課題を解決するポテンシャルを秘めているとも言うことができます。


ここまでビットコインとマネーロンダリングの問題を理解する上での前提知識を説明してきました。

ここからは、ビットコインがマネーロンダリングに使用される可能性に対する、国内外での見解を見ていきましょう。

まずは、英国政府の見解です。

2015年10月、英国は、マネーロンダリングとテロ資金が国家に与えるリスクに関してのレポート「UK national risk assessmentof money laundering and terrorist financing」(以下「NRAレポート」)を公表しました。

このレポートで注目すべくは、仮想通貨がマネーロンダリングに使用される可能性リスク(脆弱性)は、銀行やカジノよりも低いとみなされている点です。

特に、レポート内に掲載されている資金洗浄危険評価の表では、危険の度合いによって「High(高い)」「Medium(普通)」「Low(低い)」と三段階に分けられていますが、ここでもDigital carrensies(仮想通貨)のレベルは「Low(低い)」の評価を受けています。

下記は、NRAレポートの情報を基に作成した脆弱性とリスクに関する表です。

  脆弱性トータルスコア リスクレベル
銀行 34 高い
信託会社 11 普通
不動産業 11 普通
カジノ 10 低い
電子マネー 10 普通
仮想通貨 5 低い

仮想通貨が、銀行や不動産業など、既存の機関やシステムに比較してみて、マネーロンダリングに使用される可能性は極めて低いものであると評価されていることが分かります。

トータルスコアの数字を見ても分かるように、仮想通貨の脆弱性は銀行の脆弱性の6分の1にも満たないという認識です。

また、NRAレポートには以下のようなことも書かれています。

  • 仮想通貨に関連するマネーロンダリングのリスクは低いです。
  • しかし英国で仮想通貨が普及するようになれば、このリスクは上昇する可能性があります。
  • 現状では、仮想通貨は、テロリストが英国から資金を調達または移転する方法ではありません。
  • ただし、そうするために実行可能な方法が残っています。

参考元:UK national risk assessmentof money laundering and terrorist financing

このように、少なくともNRAレポートが発表された2015年10月時点では、英国政府は仮想通貨がマネーロンダリングに使用される可能性があることを認識してはいたものの、そのリスクを低く見積もっていたことが分かります。

しかし、仮想通貨のが世界的に普及するにしたがい、英国政府の見解は変容していきます。

2018年2月13日、イギリスの新聞社The Telegraphは、仮想通貨業界で初となる自主規制団体「CryptoUK」(クリプトUK)がローンチしたことを報じました。

CryptoUK(クリプトUK)は、仮想通貨業者の行動規範の設定や遵守を促すことにより、仮想通貨を利用したマネーロンダリングやその他の非合法活動を防止していくと宣言しています。

そこに、英国政府の連携があるということです。

CryptoUK(クリプトUK)の公式サイトには「マネーロンダリング防止規制に沿って、テロ資金供与を含む違法行為から守っていく姿勢」が行動規範に掲げられています。

In line with anti-money laundering regulations, members commit to undertaking due diligence checks on platform users to protect against illegal activity, including the financing of terrorism.

CryptoUK

CryptoUKとの連携からは、英国政府が、仮想通貨がマネーロンダリングに使用されテロ活動の資金源となる可能性を危惧していることがうかがえます。

また、ブルームバーグの記事によると、英国のテリーザ・メイ英首相は仮想通貨が犯罪者によって悪用される可能性に深刻な懸念を持っており、今後対策を取っていく狙いであることを示唆しています。

“In areas like cryptocurrencies, like Bitcoin, we should be looking at these very seriously,” May said in a television interview in Davos with Bloomberg’s Editor-in-Chief John Micklethwait. Action on crypto-currencies may be needed “precisely because of the way they are used, particularly by criminals,” she said.

bloomberg

英国政府に限らず他のEU諸国の政府も、仮想通貨がマネーロンダリングや脱税に使われているとの懸念が高まっている中で、ビットコインの取り締まりを計画する方向へ動いています。

2017年12月Guardian Newsに掲載された「Bitcoin: UK and EU plan crackdown amid crime and tax evasion fears(英国とEU、犯罪と脱税の恐怖の中での弾圧を計画)」と題された記事では、下記のようなことが書かれています。

  • 英国と他のEU諸国の政府は、仮想通貨がマネー・ローンダリングや脱税に使われているとの懸念が高まっている中で、ビットコインの取り締まりを計画している
  • 英国財務省は、反テロ対策財政法案に沿うように、ビットコインやその他の暗号化通貨を規制する計画
  • 英国政府は、企業の活動が国家当局によって監督されていることを確認するために、マネーロンダリング防止指令の改正について交渉している

以上、ここまで、ビットコインがマネーロンダリングに使用されることへの見解として、英国政府の見解を主に見てきました。

ここからは、日本政府や日本国内での見解について見ていきましょう。

まずは、警察庁の見解です。

平成28年11月に警察庁によって公表された犯罪収益移転危険度調査書では、新たに仮想通貨及び国際テロリストに関する記載が加わりました。

調書には、「仮想通貨は、その利用者の匿名性が高いこと、仮想通貨の移転が国際的な広がりを持ち、迅速に行われること等から、犯罪による収益の移転に悪用される危険性があると認められる」とあり、仮想通貨が資金洗浄に使われる危険性について、明確に記載しています。

参考元:犯罪収益移転危険度調査書

また、2018年2月23日日本経済新聞の記事によれば、マネーロンダリング(資金洗浄)などの疑いがあるとして、2017年4月から12月までに仮想通貨の交換業者が国に届け出て受理された「疑わしい取引」が669件ありました。

  • 仮想通貨の交換業者は2017年年4月から疑わしい取引の届け出が義務付けられている
  • 届け出が受理された件数は開始から半年間で170件
  • 2017年10月以降の3カ月間で急増し、当初の半年間の3倍近い499件の届け出があった

以下は、「疑わしい取引」件数全体に対する、業態別の割合です。

  • 銀行などの預金取扱機関が全体の90.8%
  • クレジットカード事業者が3.9%
  • 株式などの金融商品取引業者が2.1%
  • 仮想通貨交換業者は0.2%

このように、仮想通貨交換業者による「疑わしい取引」が全体に占める割合としては0.2%と低いものの、急増率が大きいこともあり、警察庁は仮想通貨は犯罪収益の移転に悪用される危険性があるとみて今後の警戒を強めています。

参照元:日本経済新聞

上記では、警察庁が仮想通貨がマネーロンダリングに使用される危険性を認められる調書を公表していることを紹介しました。

しかし、そういった見方と反対の視点もあります。

日本経済新聞が米国のオンラインメディア「ベンチャービート」から転載した2017年10月13日の記事には、「ブロックチェーン技術を使えば、仮想通貨は法定不換通貨よりもマネーロンダリングのリスクを抑えられる」とあります。

参考元:日本経済新聞

そもそも、従来の金融機関等によるマネーロンダリング対策はどのようになっているのでしょう?

当該新聞記事を参考に、特徴を挙げてみます。

  • 現行のマネーロンダリングの監視メカニズムでは、全ての取引の法的主体を特定できる
  • 法定不換紙幣(政府が発行したお金)の追跡データには(1)銀行口座の開設など金融システムの入り口、(2)口座間の送金や銀行間の国際決済ネットワークを運営する国際銀行間通信協会(SWIFT)を使った送金など金融システム内での取引があるが、こうしたシステムによって金融活動を監視し、関連通知や報告で追跡調査を進めることが可能である

以上のことから、銀行において、犯罪で得た資金が悪用されていることが分かれば、関係人物を容易に特定できると述べています。

これに対し、これまで仮想通貨は報告義務が緩く既存のマネーロンダリング対策やテロ組織への融資規制の適用が極めて難しい「ブラックボックス」だとみなされる向きがありました。

しかし、当該新聞記事には、そういった評判はやや的外れであるどころか、「仮想通貨に組み込まれたブロックチェーン技術の特性は、マネーロンダリング対策を阻むどころか、既存のメカニズムを超える成果を上げる力を秘めている」とあります。

どういうことでしょうか?

仮想通貨が、銀行等の持つ既存のメカニズムよりもマネーロンダリングに適していないとする根拠としては、仮想通貨が持つ以下のような特徴が挙げられています。

  • 全ての取引はただちに分散台帳の参加者と暗号マイナー(採掘者、ブロックチェーンを運営している個人や団体のコンピューターを指す)に通知される
  • 各国政府がかなりの対策費を投じている偽造通貨とは異なり、仮想通貨は端から端までマイナーに検証される特性があるため、偽造はほとんど不可能
  • 出金ウォレットや入金ウォレットなどあらゆる取引段階の検証や、通貨の種類や金額に関する情報に不足があれば、取引はただちに自動でブロックされる
  • したがって、デジタル通貨は既存の法定不換通貨よりもマネーロンダリングを規制しやすいといえる

様々な取引プラットフォームを使える法定通貨とは異なり、仮想通貨には入り口と出口が1種類しかなく、かつブロックチェーン技術によって身元追跡能力を高められる点において、マネーロンダリングには適していないとの見方を示しているのです。

ここからは、仮想通貨関連事業に関わる人物の見解についても、見ていきましょう。

仮想通貨取引所Zaifの社長・朝山貴生氏は、ビットコインが既存の銀行など金融機関と比較してもマネーロンダリングに適していないという考えです。

  • 銀行は利用者に元帳データまで公開しないのに対し、ビットコインの元帳は誰でも自由にダウンロードできる
  • ネットワーク参加者全員が管理であるということ
  • ビットコインで送金された内容を見るには、時間さえ掛ければ全てその記録から追いかけられる
  • ビットコインで多額のマネーロンダリングを行っても、大金はどこかで現金にするしかない
  • 売却と現金化が大変だしそこで足が付く

参照元:TechCrunch

また、ビットコイン自体の問題としてではなく、周りの環境を問題視する人もいます。

大石哲之氏プロフィール

2013年にビットコインに出会ってから、フルタイムの暗号通貨ブロガーとして活躍。 ビットコインの仕組みやイーサリアムを初めて日本で一般向けに紹介したほか、Ethereumにイーサリアムと訳語をつけ、定着させた。

参考元:ビットコイン研究所

コインの技術的な仕組みは非常にセキュリティが高いが、それを運用する仕組みには詐欺やセキュリティーホールがたくさん存在している。これが解消されなければ、一般の人が安心して使えるようにはならないというのは確かであり、大きな課題であるとともに、政府のレギュレーションづくりによってリードされるべきところであろう。

BLOGOS

金融庁は、仮想通貨のマネーロンダリングに対していくつかの措置を講じています。

例えば、仮想通貨交換業者の登録の審査時のポイントに「マネーロンダリング防止とテロ資金対策を踏まえた顧客の本人確認の態勢が整備されているか」を挙げています。

また、2018年2月6日に公表された”マネー・ローンダリング及びテロ資金供与対策 に関するガイドライン”の中では、マネーロンダリングに対して以下のような措置を取っていることを掲載しています。

  1. 金融機関から情報の提出を受ける
  2. 官民連携・関係当局との連携を強める
  3. ブロックチェーン技術を含むFinTechの活用を検討

一つ一つの項目について、くわしく見ていきましょう。

金融庁は、必要に応じて各金融機関から下記情報の提出を受けることを表明しています。

  • 疑わしい取引の届出件数
  • 内部監査や研修等の実施状況
  • 特定事業者作成書面等
  • マネロン・テロ資金供与リスク管理についての経営陣への報告や、必要に応じた経営陣の議論の状況

参考元:マネー・ローンダリング及びテロ資金供与対策に関するガイドライン

また、情報収取するにあたって、金融庁は業界団体や、関係省庁、外国当局との連携を深め、情報収集を強化することを公表しています。

こうした過程で収集した優良事例等について、金融機関等と共有を図っていく見通しです。

また、個別金融機関等とも継続的に対話を行うなどして、マネロン・テロ資金供与対策に係る課題や解決策、環境整備等についての継続的な検討を促していくとしています。

金融庁としては、このように、業界団体・個別金融機関等、関係省庁、外国 当局と密接に情報交換・連携を図り、我が国における実効的なマネロン・テロ 資金供与対策を確保するための施策を講じていく。

マネー・ローンダリング及びテロ資金供与対策に関するガイドライン

ガイドラインでは、上記二点で挙げた情報収集のほか、金融庁がFinTech(フィンテック)技術を活用していくことを検討していることも挙げています。

具体的には、取引時確認や疑わしい取引の検知・届出等の様々な局面で、AI(人工知能)、ブロックチェーン等の新技術が導入されており、実効性向上に活用されているということです。

ちなみにフィンテックとは、金融を意味する「ファイナンス(Finance)」と、技術を意味する「テクノロジー(Technology)」を組み合わせた造語です。

こうした新技術のマネロン・テロ資金供与対策への活用は、今後も大きな進展が見込まれるところであり、金融機関等においては、当該新技術の有効性を積極的に検討し、他の金融機関等の動向や、新技術導入に係る課題の有無等も踏まえながら、マネロン・テロ資金供与対策の高度化や効率化の観点から、こうした新技術を活用する余地がないか、前向きに検討を行っていくことが期待される。

マネー・ローンダリング及びテロ資金供与対策に関するガイドライン

以上、日本の金融庁によるマネーロンダリング対策について、昨年公表された3018年2月時点で最新のガイドラインの記載を参考に見てきました。

金融庁が今後はますます情報収集体制を強化し、各機関との情報の共有につとめるだけでなく、フィンテックなどの新技術も積極的に取り入れていく姿勢であることがうかがえます。

ここからは、国際的なマネーロンダリング対策機関について、ご説明します。

ここで紹介するのは、以下の2機関です。

  • 金融活動作業部会(FATF)
  • アジア太平洋マネーロンダリング対策グループ(APG)

それぞれの機関について、概要をご説明します。

  FATFの基本情報
設立年 1989年
参加国・地域の数 35
参加国・地域の一覧 アルゼンチン、オーストラリア、オーストリア、ベルギー、ブラジル、カナダ、中国、デンマーク、フィンランド、フランス、ドイツ、ギリシャ、香港、アイスランド、インド、アイルランド、イタリア、日本、ルクセンブルク、マレーシア、メキシコ、オランダ、ニュージーランド、ノルウェー、ポルトガル、ロシア、シンガポール、南アフリカ、韓国、スペイン、スウェーデン、スイス、トルコ、英国、米国、欧州委員会(EC)、湾岸協力理事会(GCC)
活動目的 マネーロンダリング対策における国際協調の推進

金融活動作業部会(Financial Action Task Force on Money Laundering)は、マネーロンダリング対策における国際協調を推進するために設立された政府間会合です。

2001年9月の米国同時多発テロ事件発生以降は、テロ資金供与に関する国際的な対策と協力の推進にも指導的役割を果たしました。

日本は1989年に金融活動作業部会(FATF)が設立れた当初からのメンバーであり、1998年7月から1999年6月までは議長国も務めました。

FATFの主な活動内容は以下のとおりです。

① マネー・ローンダリング対策及びテロ資金対策に関する国際基準(FATF勧告)の策定及び見直し ② FATF参加国・地域相互間におけるFATF勧告の遵守状況の監視(相互審査) ③ FATF非参加国・地域におけるFATF勧告遵守の推奨 ④ マネー・ローンダリング及びテロ資金供与の手口及び傾向に関する研究

警察庁ホームページ

続いて、アジア・太平洋マネー・ローンダリング対策グループ(Asia/Pacific Group on Money Laundering)についてご説明します。

  APGの基本情報
設立年 1997年
参加国・地域の数 41
参加国・地域の一覧 アフガニスタン、オーストラリア、バングラディシュ、ブータン、ブルネイ、カンボジア、カナダ、台湾、中国、クック諸島、フィジー諸島、香港、インド、インドネシア、日本、韓国、ラオス、マカオ、マレーシア、モルジブ、マーシャル諸島、モンゴル、ミャンマー、ナウル、ネパール、ニュージーランド、ニウエ、パキスタン、パラオ、フィリピン、パプアニューギニア、サモア、シンガポール、ソロモン諸島、スリランカ、タイ、東チモール、トンガ、米国、バヌアツ、ベトナム
活動目的 アジア太平洋地域におけるマネーロンダリング対策の促進

この機関の主な目的は、アジア・太平洋地域におけるマネーロンダリング対策が不十分で「抜け穴」となり得るような国・地域をなくすことにあります。

2017年11月時点で、41か国・地域が参加しています。

日本は、金融活動作業部会(FATF)同様、アジア太平洋マネーロンダリング対策グループ(APG)においても設立当初からのメンバーであり、2004年7月から2006年6月までは、オーストラリアとともに共同議長国を務めました。

APGの主な活動内容は以下のとおりです。

① アジア・太平洋地域におけるFATF勧告の実施の推奨・促進 ② 域内諸国・地域におけるマネー・ローンダリング防止、テロ資金供与防止に関する法律の立法化の促進 ③ 参加国のマネー・ローンダリング対策、テロ資金供与対策の実施状況の相互審査 ④ 域内におけるマネー・ローンダリングの手口、傾向等についての情報交換、分析等

警察庁ホームページ

以上、マネーロンダリング対策のための国際的な機関として2つの機関の概要と活動内容についてご説明いたしました。

ビットコインや仮想通貨が抱えるマネーロンダリングがそこまで大きくないという意見が多いですが、一方で 「匿名性通貨」と呼ばれる仮想通貨がマネーロンダリングに活用されているとの見方も出ています。

次の段落では「匿名性通貨」について説明していきましょう。

匿名性通貨とは、その名の通り、送信者や受信者を匿名化した形で取引を行うことを可能にする仮想通貨のことを指します。

匿名性通貨のメリットとデメリットは、それぞれ以下の通りです。

  • 匿名性通貨のメリット:プライバシーが保護される
    →誰がいくら所有しているのか、どこに送金しているのかを秘匿できる
  • 匿名性通貨のデメリット:マネーロンダリングに利用される可能性がある

有名なものとしては、以下のような匿名性通貨があります。

  1. DASH
  2. MONERO
  3. ZCASH

以下で、それぞれの通貨の特徴について、説明していきます。

DASH(DSH)は2014年7月に公開され、時価総額第10位の仮想通貨です。(2018年2月現在)

通貨名(通貨単位) DASH(DSH)(※1)
公開日 2014年7月
公式HP 【公式サイト(Dash)】
秘匿にされる情報 送信者
受信者

(※1)元々はDarkcoin(ダークコイン)として公開されましたが、2015年5月にDASH(DSH)に名称変更しました。

DASH(DSH)は以下のような特徴を持っています。

  • 通貨の送受信の際に、一度管理ノードというプールを経由して、複数の送受信依頼をシャッフルして受信者に送る(コインミキシングと呼ばれる手法)ことで、どのコインが誰から誰に送られたのかを分からなくしている

  • DASH(DSH)という名前の由来になっているのが、取引スピードの速さです。2015年に導入された「InstantX」という機能により、取引は1秒未満で承認される

MONERO(XMR)は2014年4月に公開され、時価総額第12位の仮想通貨です。(2018年2月現在)

通貨名(通貨単位) MONERO(XMR)
公開日 2014年4月18日
公式HP 【公式サイト(Monero)】
秘匿にされる情報 送信者
受信者

MONERO(XMR)は、以下のような特徴を持っています。

  • 「CryptoNight」という匿名性に特化したアルゴリズムを採用し、「リング署名」「ステルスアドレス」を活用することで、取引履歴からをアドレスを特定することが非常に困難にしている
  • 暗号化を使用して、送受信されたアドレスだけでなく、取引金額も保護する

参考元:MONERO公式サイト

ZCASH(ZEC)は2016年10月28日に公開され、時価総額第23位の仮想通貨です。(2018年2月現在)

通貨名(通貨単位) ZCASH(ZEC)
公開日 2016年10月28日
公式HP 【公式サイト(Zcash)】
秘匿にされる情報 送信者
受信者
金額

ZCASH(ZEC)は、以下のような特徴を持っています。

  • 強力なプライバシー保護を提供する分散型オープンソース暗号化方式を採用
  • トランザクションの送信者、受信者、および金額までを非表示

参考元:ZCASH公式サイト

ZCASH(ZEC)は、ゼロ知識証明という仕組みを用いて、送信者・受信者はもちろん、取引金額、その他の情報まで含め、完全非公開で仮想通貨の取引を行うことを可能にしています。

前述のDASH(DSH)やMONERO(XMR)よりも匿名性が高いのが特徴です。

以上、本記事では、マネーロンダリングとは何か?というところから、ビットコインがマネーロンダリングに使用される可能性やその理由と見解、また、金融庁や国際機関の行うマネーロンダリング対策の取り組みについて見てきました。

また、仮想通貨の中でもビットコインのように透明性を打ち出した通貨がある一方、DASHやMONERO、ZCASHのように匿名性を持たせてプライバシーを守る特徴を持った匿名性通貨と呼ばれる種類のあることが分かりました。

匿名性通貨だからと言って一概に悪いとは言えませんが、現状では、犯罪に使われる可能性が比較的高まることは事実です。

今後も、各通貨においての更改や、関係機関のマネーロンダリング対策への取り組みにおいて、大きな動きが出てくることが予想されます。