目次

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  1. 予測市場とは?
  2. ブロックチェーンが実現する分散型の予測市場とは?
  3. 予測市場の実現を目指す仮想通貨プロジェクト
  4. まとめ:今後の予測市場について
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ビットコインをはじめとする数々の仮想通貨プロジェクトで利用されているブロックチェーンですが、予測市場の領域でもブロックチェーンを活用しているAugurやGnosisといった仮想通貨のプロジェクトが立ち上がっています。

この記事を訪れている人の中には、

「予測市場を実現するのにブロックチェーンを使う意義、メリットはあるのか?」
「どのような仕組みで仮想通貨で予測市場を実現しようとしているのか?」
「予測市場を実現しようとしている仮想通貨プロジェクトとは具体的にどのようなものがあるのか?」

など気になる方も多いのではないでしょうか。

そこで今回の記事では、予測市場についてのおさらいをした後、ブロックチェーンによって実現する予測市場の特徴、仕組みを解説し、予測市場の実現を目指す仮想通貨プロジェクトの紹介をしていきます。

予測市場(prediction market)とは”将来予測するための先物市場”です。

わかりやすく言い換えると、未来に起きる出来事に対して予測をたてお金を賭ける市場のことで、お金を賭けた人の予測が正しければ報酬を受け取ることができ、予測が間違っていれば賭け金を失います。

予測市場のわかりやすい例としては競馬が挙げられます。

競馬は、レースに賭けたい人たちが集まり、レースの結果を予想してお金を賭け、正しい予測ができればオッズに従い配当が得られ、間違った予測をすると賭け金を失います。

そして、予測市場はそれなりに確からしい精度で未来を予測できるとも言われています。

著書『普通の人たちを預言者に変える「予測市場」という新戦略』によると、ニューヨーク大学のスティーブン・フィグルースキー教授の研究で、数年分のレースの結果を調べ、競馬の予想屋が勝ち馬を当てる確率は28.7%だったのに対し、一般の人々は29.4%であるとありました。

参照元:「普通の人たちを予言者に変える「予測市場」という新戦略」, ドナルド・トンプソン, ダイヤモンド社, 36−37p

予測市場と関連する概念として、群衆の知恵(the wisdom of crowd)とというものがあります。 これは2004年にジェームズ・スロウィッキーが自身の著書にて提唱した概念であり、「みんなの意見は案外正しい」ということです。

経済学者ジャック・トレイナー教授の実験では、教授が教室で56人の学生に瓶の中のチェリービーンズの数を推定させました。学生の推定値の平均値は871個で、正解の850個より21個多かっただけでした。56人のうちこれより誤差の小さい推定をした学生は1人しかいなかったのです。

このように予測市場は個人では難しい推定などに大きな威力を発揮するのです。

中央集権的な管理者が存在する予測市場の例:競馬(JRA)

競馬でいうJRAが管理者として取りまとめをしているように、既存の予測市場では中央集権的な管理者が以下のような役割を担っています。

  • オッズの算出
  • 結果の選択(ジャッジ)
  • 掛け金の集金や配当の分配

では、中央集権的な管理者が存在することにより、どのようなリスクが存在するのでしょうか?

競馬でも進路妨害した騎手などの判定をするのは中央管理者であるように、管理者が結果のジャッジを下しているため透明性が薄く、事実とは異なる結果が採択されるかもしれません。

また、配当(オッズ)の改ざんが行われたり、その管理者が払い戻しを意図的にしなかったり、思いがけないトラブルによって経営できなくなり、参加者が配当が与えられないということも考えられます。

そして、管理者の運営するコストと利益は参加している人から手数料として徴収されるため、実際にベットする人は平均するとベットする元金を下回る期待値となります。

つまり、中央集権的かつ資金をベットするような予測市場では

  • 透明性が薄く、管理者によって結果や投票内容が改ざんされる可能性がある
  • 管理者にトラブルが発生した際に、ベットした資金の保証がされない可能性がある
  • 管理者が存在するゆえに高い手数料が発生する可能性がある

といった課題があります。

続いて、ブロックチェーンを活用した予測市場においては、どのような特徴を持つのかみていきましょう。

分散型の予測市場のイメージ

予測市場においてブロックチェーンを活用すると、以下のような特徴を持った予測市場を作ることができます。

  • 透明性が高く、不正ができない
  • 参加者が納得のいくような合意形成方法(アルゴリズム)に基づいた結果の採択
  • 参加者によって運営されているので、一部の参加者に問題が起こっても全体に影響が及ばない
  • 低コストで予測市場が実現できる

そして上記のような中央管理者の存在しない分散型の予測市場を実現するためには、以下の4つの要素が重要となります。

  1. スマートコントラクト
    執行内容とその執行条件を事前にプログラムをブロックチェーン上に記述することで、執行条件が達成されたときに自動的に執行内容が実行されるという仕組み
  2. オラクル(Oracle)
    結果の候補をブロックチェーン上にインプットするシステム
  3. コンセンサスアルゴリズム(合意形成方法)
    どの候補を結果とするのかの採択方法
  4. トークンエコノミー
    正しい予想をするため、正しい結果を選択するためのインセンティブ/ペナルティ設計

それでは、分散型の予測市場を実現するそれぞれの要素について詳しくみていきましょう。

スマートコントラクトは、プログラムに基いて自動的に実行される契約のことを指します。

ブロックチェーンの文脈で説明するのであれば、契約内容とその執行条件を事前にプログラミングしてブロックチェーン上に乗せることで、執行条件が達成されたときに、人の手を介さず、かつ誰からも改ざんされない形で契約内容が執行されるような仕組みと言い表すことも可能です。

予測市場においては、各々の予想をブロックチェーン上に記録をすることで、その時のオッズと結果にしたがって機械的に払い戻しをするシステムの構築が可能となるため、中央管理者なしで払い戻し機能を実現できます。

このようにしてスマートコントラクトを活用した中央管理者のいない予測市場では、改ざんが困難で契約不履行の心配がない、透明性が担保される、決済期間の短縮、コストの削減といったメリットがあります。

オラクルとはネットワーク外部に存在するデータをネットワーク内部に取り込むシステムです。

予測市場におけるスマートコントラクトを実現する上で鍵となるのが、どのように執行条件の判断をくだすための”結果(情報)”をブロックチェーン上に取り込むのかという点ですが、まさにこのオラクルがブロックチェーンと現実の情報との橋渡しとなっています。

中央集権的管理者が存在する場合、管理者がオラクル(中央集権型オラクル)として機能し、ブロックチェーン上に結果(情報)を持ってきます。

それに対して、中央管理者の存在しない分散型オラクルではブロックチェーンのネットワークに参加している方が結果となるデータを提案し、参加者全体でどのデータを結果(情報)として採用してブロックチェーン上に取り込むのかを合意形成します。

この時の合意形成するための仕組みをコンセンサスアルゴリズムと呼び、詳しくは次で説明していきます。

イメージとしては、競馬のレースの結果を馬券を買っている全ての人による多数決によって決めるようなシステムを想像していただければと思います。

上記のオラクルのところでも説明しましたが、中央管理者が存在しない予測市場の場合、予測市場のネットワークに参加している参加者が、結果となるデータをネットワークに対して提案し、どのデータを結果として扱うのかは、ネットワーク参加者によって合意形成される必要があり、合意形成するためのルールをコンセンサスアルゴリズムと呼びます。

オラクルによって選択された結果が本当に正しくなければ、正しい結果を予測できた人に払い戻しがされず、誰もこのプラットフォームを使わなくなってしまうため、より正しい結果(予測市場のネットワーク参加者が納得のいく結果)を選択できるような、コンサンサスアルゴリズムが重要となります。

そのため各予測市場のプロジェクトは、より正しい結果(予測市場のネットワーク参加者が納得のいく結果)が採用されるような仕組みを作るべく独自にコンセンサスアルゴリズムを設計しているのです。

ここまでの説明で「分散型オラクルの場合、予測市場のネットワークに参加している人たちが本当に正しい結果を選択するような行動をとるのか?」”疑問に思われている方もいるのではないでしょうか。

コンセンサスアルゴリズムが多数決のような形の場合、自分が利益を得られる結果を選択しようと不正を働くような方も出てくるはずです。

予測市場の仮想通貨プロジェクトでは、大体独自のトークンを用いて予測市場を実現していますが、そのトークンは、例えば以下のように使われることで、予測市場が健全な形に向かって成長するような仕組みを構築しています。

  • 正しい結果を予想している人に対して報酬として支払われる
  • トークンを所有している人が、予想の結果の判断をする権利を得る
    →トークンを所有している人は、誤った結果になるように導くと予測市場プラットフォーム自体の価値が薄れるため、トークンの価値も薄れてしまう

幾つかの仮想通貨の具体例を見るとイメージがつくかと思うので、次の段落からは代表的な予測市場を形成する仮想通貨プロジェクトを紹介していきます。

現在、予測市場の実現を目指す代表的な仮想通貨プロジェクトとしては、以下の3つの仮想通貨プロジェクトが挙げられます。

  1. Augur(オーガー)
  2. Gnosis(グノーシス)
  3. Stox(ストックス)

それぞれの予測市場関連の仮想通貨プロジェクトについて、順に見ていきましょう。

Augurはトラストレス、つまり第三者の信頼を必要としない分散型オラクル予測市場のプラットフォームです。

この分散型オラクルというのがAugurの大きな特徴です。 つまり、Augurでは賭けの結果も分散型でユーザー間で決められるような仕組みを作っているのです。 Augur内で使用される独自トークン(通貨)はREP(Reputation)と言います。

Augurでは正しい結果の採用に貢献したREP保有者に貢献度に応じて報酬が支払われるようなトークンエコノミー設計にすることで、常にネットワークに正しい結果が採用されるようにメカニズムデザインされているのです。

誰でも賭けの内容を決めることができ、ユーザーはREPを保有しなくてもETHを使い賭けをすることが可能です。

賭けをしたユーザーは結果的に正しいものに賭けたり、期間中にうまくトークンを売買して利益をあげることができます。

Gnosisは、ユーザーが予測市場から複雑な事柄に対しての洞察をより簡単に得ることでより適切な判断が下せるようにという目的の元作られました。

また、保険や資産のリスクヘッジなどの予測市場に対する様々な間接的なアプリケーションの世界を開拓しようとしたものです。

Gnosisは、Augurより後にできた仮想通貨であり、GNO,OWLという2つのトークンが存在します。

  • GNO:他のトークンと同じように取引所などで入手することができます
  • OWL:GNOをロック(交換や送金をできなくする)ことで生み出されます

このOWLトークンは1ドルの価値があるように設定され、賭けを行う上での手数料の支払いに使えます。

また、手数料に使われたOWLやOWL以外で支払われた手数料と交換されたGNOはバーン(消滅)されて誰も使えなくなります。

これによってGNOを保有するユーザーが増え、多くの賭けが行われ、ネットワークを大きくする工夫がなされています。

Gnosisは、Futarchyという仕組みで意思決定を自動的に正しく通知できるようにして分散オラクルを実現することを目指しています。 Futarchyとは経済学者Robin Hansonによって提案された意思決定の仕組みです。

しかし、現在は集中型オラクルしか利用されていません。

また、余談にはなりますがGnosisは実に予測市場の仮想通貨らしいICOを行いました。

GnosisのICOでは、時間が経つにつれ、GNOトークンの値段が下がり、購入希望者は買いたい値段の時に落札すればその値段以下の値段で購入できるという仕組みが用いられました。

これにより、適切な価格で購入されるという理論のもとでICOが行われました。

Stoxは、Augur,Gnosisより1年ほど後にinvest.comという企業が作成したもので、すでに母体のある企業があるという点でその他の二つの仮想通貨プロジェクトと異なります。

この企業はオンラインの金融取引を扱っている世界的企業であり、そのノウハウ、既存の顧客基盤を生かしてより経済を流動的にしていこうと考えています。

こちらも集中型オラクルの利用を考えており、よりユーザーに多様な興味を与える工夫をしています。

仮想通貨のブロックチェーンの仕組みは透明性が必要な予測市場の実現にうってつけであり、この分野のプロジェクトは社会インフラになる可能性を持っています。

例えば、保険の領域での活用も期待がされております。

現在は保険会社が提供する保険商品の範囲内でしか保険に加入することができませんが、誰でも自由に作成/参加できる予測市場が実現された場合、人さえ集まればあらゆるものに対して保険を賭けることができます。

例えば、大学受験を控えている学生が、大学に合格すると言うギャンブル(予測市場)を立ち上げ、多くの人が賭けに参加した場合、自分が落ちる方に賭ければ不合格になった際に、予備校代が報酬として得られるかもしれません。

もちろん賭博性は高いものになるため、各国の法律や規制に揉まれるかとは思いますが、今後の予測市場の仮想通貨プロジェクトの動向には是非注目してみてください。