目次

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  1. イーサリアム(ethereum)の分裂とは?
  2. 【イーサリアムクラシック】イーサリアムの分裂騒動②
  3. 【Parity】イーサリアムの分裂騒動②
  4. 【イーサゼロ(EtherZero)】イーサリアムの分裂騒動③
  5. 【ASIC開発】イーサリアムの分裂騒動④
  6. イーサリアム(ethereum)の分裂騒動のまとめ
Large ethereum

イーサリアムやビットコインなどの仮想通貨で度々耳にする分裂騒動。

中でも、この記事は

「イーサリアム(ethereum)の分裂とは」
「イーサリアム(ethereum)の分裂騒動や騒動の理由について知りたい」

という読者の方向けに、「そもそも分裂とは?」ということから、「イーサリアムの分裂騒動の歴史」について、わかりやすくご説明します。

イーサリアムの「分裂」とは、「ハードフォークと呼ばれる仕様変更によって、派生通貨が誕生すること」を意味します。

イーサリアムでは、度々分裂騒動が起こっていますが、イーサリアムの分裂の歴史は以下の通りです。

イーサリアムの分裂騒動の歴史

  • 2016年6月:Dao事件が発生
  • 2016年7月:Dao事件の結果、イーサリアムクラッシック(ethereum classic)誕生
  • 2017年7月:『Parity社』が提供するイーサリアムウォレットの脆弱性が見つかり、15万ETH(時価約3,000万ドル)が盗難の被害に逢う
  • 2017年11月:『Parity社』が提供するイーサリアムウォレットに2度目の脆弱性が見つかる
  • 2018年1月:イーサゼロ(EtherZero)のテストネットワークがリリース
  • 2018年2月:イーサゼロ(EtherZero)がメインネットで本格リリース
  • 2018年4月:『Parity社』が「ハードフォークをしない」と正式発表
  • 2018年4月:中国北京にある『Bitmain』社がイーサリアムやイーサリアムクラッシックに対応したマイニングマシン「Antminer E3」を発表し、ハードフォーク案が浮上
  • 2018年4月:YouTubeで配信された会議でイーサリアム創始者ヴィタリック氏が「行動を起こさない(ハードフォークしない)」と言及

ここからは、イーサリアムの分裂騒動の歴史に関して、次の4つの出来事をピックアップし、それぞれくわしく見ていきたいと思います。

  1. イーサリアム(ethereum)とイーサリアムクラシック(ethereum classic)の分裂騒動
  2. 『Parity』社が提供するイーサリアムウォレットに2度の脆弱性がみつかる
  3. イーサゼロ(EtherZero)リリース
  4. ASICを用いたマイニングマシン「Antminer E3」発表

まずは、イーサリアムとイーサリアムクラッシックの分裂騒動から、ご説明します。

発端は、イーサリアムのプラットフォームを使用したサービスへのハッキング事件でした。

2016年6月17日、イーサリアムのプラットフォームを使用した『The Dao』(分散型投資ファンド組織)と呼ばれるサービスがハッキングを受け、約50億円分のイーサリアム(約360万Ether)がハッカーに奪われる事件が発生しました。

後に「DAO事件」、あるいは「DAO Hack」や「DAO Attack」と呼ばれる出来事です。

この事件はあくまでDAOの脆弱性に起因するものであり、イーサリアムが原因のものではありません。

イーサリアム創始者・ヴィタリック・ブテリン(Vitalik Buterin)氏は、ハッキング事件発覚当日に、イーサリアムの公式ブログで次のように述べています。

This is an issue that affects the DAO specifically; Ethereum itself is perfectly safe.

CRITICAL UPDATE Re: DAO Vulnerability

意訳

これは特にDAOに影響する問題です。イーサリアム自体は完全に安全です。

しかし、当時は仮想通貨やブロックチェーンい対する理解が浅かったため、イーサリアムの脆弱性が原因で、この事件が起きたと勘違いしたユーザーが多かったそうです。

そのため、イーサリアムの価格は暴落。

イーサリアムのコミュニティでは、このDAO事件に関して何らかの対処をとるか、あるいは対処を取らないかという意見が出ました。

DAO事件対処法として、次の3つの方法が提示されました。

【提示された3つの対処法】

  1. 何の対策も行わない
    →攻撃者におとなしくイーサリアムを明け渡します。被害にあった360万ETHの所有者たちは救済されません。
  2. ソフトフォーク(※)を行う
    →攻撃者が資金の移動先に使ったアドレスを凍結してしまおうというものです。被害にあった360万ETHの所有者たちは救済されません。
  3. ハードフォークを行う
    →イーサリアムの開発陣が介入し、ブロックチェーンの記録を360万ETHが送金される前まで遡らせ、そもそもなかったことにするというものです。これが、被害にあった360万ETHの所有者たちが救済される唯一の方法です。

■ソフトフォークとは?
互換性のある仕様変更のことです。ハードフォークと異なり、ブロックチェーンの分裂(分岐)は一時的なものですみます。

前の章で紹介したように、DAO事件の被害者を救済する唯一の方法は、ハードフォークでした。

そこで、多くの有識者の賛同を得て、ハードフォークが実施

これにより、「そもそもDAO事件というハッキング事件は起こらなかったもの」として事件は解決に向かいました。

しかし、「イーサリアムの介入は、非中央集権的な仮想通貨の理念に反する(ハードフォークが中央集権的な介入ということ)」として、一部のコミュニティが反発。

最終的にコミュニティが対立し、元は一つであったイーサリアムが、ハードフォークを主張したEthereum(イーサリアム)と、何もしないことを主張したEthereum Classic(イーサリアムクラシック)に分裂しました。

ここまで、イーサリアムとイーサリアムクラシックの分裂騒動について見てきました。

ここからは、『Parity』社が提供するウォレットのバグが原因で引き起こされた、イーサリアムの分裂騒動についてご説明します。

2017年7月と11月の2度に渡って、『Parity Technologies』公式サイトに、同社が提供するイーサリアムウォレット「Parity Wallet」の脆弱性ついての警告が公開されました。

【Parity Walletの脆弱性について】

  1. 2017年7月19日:マルチシグウォレットのバグが原因で、約15万ETH(3,000万ドル相当)が盗難される
    →同日中にバグ修正処理を済ませた新バージョンウォレットを導入。
  2. 2017年11月8日:新バージョンのParity Walletに再び脆弱性が発覚
    →イーサリアム資産が凍結される。ハッキング被害は発生していないものの、送金などが一切できなくなる。

■マルチシグとは?
マルチシグネチャ(multisignature、複数署名)の略語です。その名の通りマルチシグとは、イーサリアムを使用する際に、複数の秘密鍵(による署名)が必要という技術です。

仮にハッカーが複数あるうちの秘密鍵を盗んだとしても、他の秘密鍵がなければイーサリアムを悪用することはできません。

簡単にいうと、ウォレットのセキュリティを高める機能です

バグの影響で、3億2,000万ドル相当のETHが凍結され、多くのユーザーは、自らの所有するイーサリアムをどうすることもできない事態になってしまったのです。

資産凍結したユーザーの救済策として、前述のDAO事件の時同様、ハードフォーク案が浮上し、イーサリアムが再び分裂するのではないかという事態に陥りました。

バグによるETH凍結から数ヶ月後の2018年4月、Parity社は公式ブログで「Ethereumブロックチェーンを分裂する考えはない」と正式に発表しました。

発表された内容を見てみましょう。

Let us make clear: we have no intention to split the Ethereum chain. We plan to continue to work with the community to find a path forward. We have all dedicated a great deal of time and effort to developing the Ethereum ecosystem, and have no intention of harming what we have helped build.

Our commitment to Ethereum and a decentralised future

意訳

我々は、Ethereumブロックチェーンチェーンを分裂する考えはありません。私たちは、イーサリアムコミュニティとともに、解決策を模索していきます。イーサリアムのエコシステムを開発していくためには、時間と労力を惜しみません。

ハードフォークを行う代わりに、Parity社は、EIP-156によってユーザーの救済を図りました。

EIP-156とは、イーサリアムまたはERC20トークンの資金凍結問題を解決するものであり、2016年10月14日にイーサリアムの開発者ヴィタリック・ブテリン(Vitalik Butrein)氏によって考案されました。

また、Parity社は、同声明で「今回の間違いを踏まえ、我々はマルチシグウォレット提供を廃止し、開発に専念する」とも述べました。

この章では、『Parity』社が提供するウォレットのバグに関する出来事について見てきました。

ここからは、イーサリアムから誕生した、イーサゼロ(EtherZero)についてご説明します。

2018年1月19日、イーサリアムからイーサゼロが分裂しました。

イーサゼロは、イーサリアムとイーサリアムクラシックのように、コミュニティが分裂したわけではないのでご注意ください。

イーサゼロは、イーサリアムとは別のコミュニティが、イーサリアムを基に開発された仮想通貨です。(ハードフォークを行うことで、少し仕様変更しました。

意訳

EtherZeroの分裂は、ブロック4936270で正常に開始されました。現在、本番と同じ状況でテストしています。ブロックチェーンエクスプローラをできるだけ早くリリースし、次の作業を行うためにEtherZeroのフォークスケジュールに従ってください。ご協力いただきありがとうございます!

テストネット発表翌月の2018年2月、イーサリアムからハードフォークで分裂した「イーサゼロ(EtherZero)」がメインネットでリリースされました。

公式サイトの表によると、イーサリアムとひっかうした際のイーサゼロの特徴は以下の通りです。

  • 取引の承認時間が10秒
    →イーサリアムは15秒
  • マスターノードを使用
    →マスターノードとは取引承認を専門に行うノードのこと。マスターノードを活用することで取引承認時間の速さを実現
  • 取引手数料が0(0 TX fee)

特徴から分かるように、イーサゼロは、トランザクション(取引履歴)の処理速度の向上に優れています。

従来、イーサリアムのトランザクション処理には時間がかかっていましたが、その課題を解決することを目指しているようです。

また、イーサゼロでは送金や決済時にかかる手数料をゼロにすることで、ユーザーの利便性を図っているのではないでしょうか。

ここまで、イーサゼロ(EtherZero)に関する出来事について見てきました。

最後に、イーサリアムのマイニング専用ASICが開発されたことによる、イーサリアムの分裂騒動についてご紹介します。

ASICは、Application Specific Integrated Circuitの頭文字をとったもので、「特定の目的のために作られた集積回路」という意味です。

パソコンが、さまざまな目的のために造られた汎用コンピュータなのに対して、ASICは、あるひとつの目的のために特化して造られた専用コンピュータです。よって、その特化された目的で卓越した性能を発揮します。

2018年4月、北京(中国)にあるマイニング関連企業『Bitmain』社が、イーサリアムやイーサリアム・クラシックに対応したマイニングマシン「Antminer E3」を発表しました。

Antminer E3の特徴は、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)と呼ばれる集積回路が使われており、従来よりも効率的なマイニングが可能になっている点です。

イーサリアム用のマイニングマシンにASICが使用されるのは、今回が世界初です。

「効率よくイーサリアムがマイニングできるようになればそれで良いのではないか?」と思えますが、イーサリアム用ASICの登場をよく思わないコミュニティメンバーもいます。

理由は、「ASIC登場により、将来的にイーサリアムの分裂が引き起こされるのではないか」という懸念があるからです。

イーサリアムのマイニングは現在PoWという仕組みを取っていますが、将来的にはPoSという仕組みに変更する計画があります。この計画が実行され、マイニングアルゴリズムが変更すれば、ASICによるイーサリアムマイニングはできなくなります。

いずれマイニングに使えなくなると分かっていながら、なぜASICが登場してきたのでしょう?

仮想通貨ニュースメディアBTCNは、「推測の域を出ないが」と前置きした上で次のように述べています。

イーサリアムがPoSにアルゴリズムを変更する際に、PoW派のコミュニティメンバーを引き連れたハードフォークを計画しているのではないだろうか。PoWを行うマイナーは、PoSにアルゴリズムが変更されるとマイニング収益がなくなるため、PoSに反対するインセンティブが存在する。

BTCN:Bitmainがイーサリアム用のASICを発売、コミュニティの反応は

2018年3月30日、イーサリアム開発メンバーの一人、パイパー・メリアム(piper merriam)氏がGithub上でとったアンケートによれば、回答者の9割以上が「ASIC無効化のためにイーサリアムの大規模なハードフォークを行うべきだ」と答えています。

しかし、イーサリアム創始者のヴィタリック・ブテリン氏は、次のように述べ、ハードフォーク案に反対の意を示しました。

“Getting everybody to upgrade is likely to be fairly chaotic and detract from more important things. So, at this point I personally lean quite significantly towards no action,”

Ethereum Founder Buterin Advises Against Declaring War on Ethash ASIC Miners

意訳

「アップグレードは混乱をもたらし、より重要なことを損なう可能性が高い。したがって現時点では、私は、行動を起こさないほうに強く傾いている」

ここでの「行動(action)」とは、ハードフォークを指しています。

前述したようにイーサリアムは、将来的にはマイニング方法を「PoW」から「PoS」へ変更する計画があります。それを見越した上で「今、混乱を招くべきではない」との主張です。

今回のイーサリアム分裂騒動では、最終的に、ハードフォークは実施されませんでした。

ここまで、イーサリアムの分裂に関して見てきました。

イーサリアムの分裂する原因や、ハードフォークに対する賛否両論についてお分かりいただけたかと思います。

【ハードフォークに対する賛成派と反対派それぞれの主張】

  • 賛成派の意見
    →ハッキングによるイーサリアム盗難被害などが起こった場合、そもそも盗難を「なかったこと」にできる。もともとの所有者が救済される。
  • 反対派の意見
    →イーサリアムが介入して分岐を起こすことそのものが仮想通貨の非中央集権性に反する。

イーサリアムに限らず、仮想通貨は今後も「ハードフォークするか否か」の分岐に直面する場面が出てくるでしょう。

ハッキング事件や、サイバー攻撃を受けた時、システムのバグや脆弱性が発見された時などです。

今後、イーサリアムの分裂騒動は再び起こるのか、今後の動向に注目していきたいと思います。