目次

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  1. 大手仮想通貨取引所がマルタ共和国に拠点を移動
  2. 仮想通貨に友好的な「マルタ共和国」とは
  3. マルタ政府、仮想通貨とブロックチェーン技術に関する3法案を閣議承認
  4. マルタ島へ移転した大手仮想通貨取引所
  5. ①仮想通貨取引所Binance【香港→マルタ移転】
  6. ②OKEx【香港→マルタ移転】
  7. ③BitBay【ポーランド→マルタ移転】
  8. 【まとめ】マルタの仮想通貨規制
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2018年春以降、香港のバイナンス(Binance)、オーケーイーエックス(OKEx)、ポーランドのビットベイ(BitBay)など、海外の大手仮想通貨取引所数社が相次いでマルタ共和国に拠点を移しました。

この記事をご覧になっている方は、

「海外の仮想通貨取引所がマルタに移転する理由を知りたい」
「マルタの仮想通貨やブロックチェーン技術の規制に関する最新の動向は何かあるの?」

といった疑問をお持ちの方もいらっしゃると思います。

そこで、マルタ島の税制優遇策や仮想通貨に関する3法案などの詳細、BinanceやOKExがマルタ島に拠点を移した経緯をわかりやすくご紹介します。

まずは、マルタ共和国の概要から見ていきましょう。

面積 316平方キロメートル(淡路島の半分)
人口 約43万人
首都 バレッタ
言語 マルタ語及び英語が公用語
政体 共和制

マルタ共和国(以下、マルタ)は、地中海に浮かぶ小さな島国です。

国の面積は日本の1000分の1以下しかありませんが、「ミニ国家」(規模の小さい国家のこと)としての、経済成長率はEU加盟国の中ではトップクラスです。

  • 法人税の最低比率5%
  • 相続税、固定資産税、贈与税を免除

マルタの法人税を日本や香港、アメリカと比較すると、税率が低く設定されています。

【マルタと各国の法人税比較】

国名 法人税
マルタ 最低5%
日本 15~23%
香港 16.5%
アメリカ 20%

法人税は企業の所得(純利益)に対して課される税金です。

仮に、企業の利益が1000万円だった場合、マルタでは50万円の法人税で済みますが、20%前後で課税された場合、およそ200万円の税金の支払いを義務付けられます。

法人税は企業が一定の利益を出す限りは、国に納め続ける税金であり納税を怠ると「脱税」として、刑事事件に発展してしまいます。

大きな利益を得ている取引所がマルタへ移転した背景には、次に紹介する仮想通貨に友好的な規制を整備していることに加え「、マルタの税制が魅力的に感じている」という理由もあるのではないでしょうか。

参照元
外務省:マルタ共和国 Republic of Malta
財務相:法人課税に関する基本的な資料
JETRO 日本貿易振興機構(香港)
JETRO 日本貿易振興機構(アメリカ)


ここからは、2018年4月にマルタで閣議決定された仮想通貨関連の3法案について、ご説明します。

マルタ政府は、2018年4月に仮想通貨やブロックチェーンに関連する以下の3つの法案を承認しました。

  1. 仮想金融資産法案(Virtual Financial Assets Bill)
    →仮想通貨とICOに関する枠組みを定めたもの
  2. マルタ・デジタル・イノベーション庁法案
    (Malta Digital Innovation Authority Bill)
    →仮想通貨業界専門の政府機関の発足を目的とするもの
  3. 技術調整&サービス法案
    (Technology Arrangements and Services Bill)
    →マルタにおけるブロックチェーン企業の合法性を認め、事業を推進することに焦点を当てたもの

仮想金融資産法案の目的は、仮想通貨やICOを予定している企業に対し、国が法律で取り締まる事です。

本法案は、仮想通貨取引所を介して資金調達をしようとしている企業に対し、ホワイトペーパーの提出を要求しています。

もしホワイトペーパーの誤った情報によって、投資家が被害を受けた場合、企業サイドで損害賠償責任を負うことを明確にしています。

日本の金融庁が発表した、「ICO(Initial Coin Offering)について~利用者及び事業者に対する注意喚起~ 」では、「ICOの仕組みによっては、資金決済法や金融商品取引法等の規制対象」となることや、無登録の事業者の行うサービスが法律の規制対象となった場合には、刑事罰の対象となることが明記されています。

しかし、マルタ政府のように、投資家の被るリスクを防ぐような具体的な政策の記載はなく、損害が生じた場合の責任に関しても触れられていません。

現在、仮想通貨に関する規制は、日本も含め整備されていない国が多いのが現状です。

マルタでは仮想通貨に関する規制が閣議決定がなされていることを考えると、仮想通貨の規制整備が比較的進んでいると考えられます。

ところで、マルタのトップ(首相)は、仮想通貨に対しどのような考えを持っているのでしょうか。

マルタの首相・ジョゼフ・マスカット(Joseph Muscat)氏は、
「仮想通貨が未来のお金であると信じている」
「将来的に、新しい経済の基盤を形成することは間違いありません」

と、仮想通貨に対する前向きな見解を示しています。

マルタの首相が、このように仮想通貨に対して前向きな見解を示していることが、マルタの仮想通貨に友好的な姿勢の一因となっているかもしれませんね。

では、2018年以降にマルタへ拠点を移した仮想通貨取引所について、見ていきましょう。

以下は、マルタへ移転した大手海外仮想通貨取引所と、関連する出来事の年表です。

  • 2018年3月23日:『バイナンス(Binance)』が香港からマルタへ移転
  • 2018年4月12日:『オーケーイーエックス(OKEx)』がマルタに拠点を設けると発表
  • 2018年4月24日:マルタ政府、仮想通貨に関連する3法案を閣議決定
  • 2018年4月29日:マルタが仮想通貨の取引高で世界最大シェア(モルガン・スタンレー調査)
  • 2018年5月29日:『ビットベイ(BitBay)』がマルタへ移転

参照元:BUISINESS INSIDER:MORGAN STANLEY: Here's where cryptocurrencies are traded around the globe


ここからは、Binance、OKEx、BitBayの移転の経緯について説明します。

2018年3月、Binanceは、香港からマルタへ拠点を移しました。

【Binance移転の背景】

  1. 香港のICO規制
    →香港は2018年2月「ICOは監視対象になる」として警告し、翌3月にICO禁止を命令。
  2. 日本の金融庁がバイナンスに警告
    →日本にオフィスを設置し、事業を展開していく予定が頓挫した。

BinanceのCEO・ジャオ・チャンポン(趙長鵬)氏は、かつてBinance公式ブログで、「ICOは仮想通貨投資より簡単で、より多くの資金を集めることが可能」として、ICOがベンチャー企業の初期投資を支える手段となる見方を示していました。

上記の考えを持つBinanceにとって、特に香港のICO規制は、大きな懸念材料となったことが考えられます。

移転について、ジャオCEOは自身のTwitterで、「マルタは暗号とフィンテックに対し非常に革新的だ。仮想通貨ビジネスには適した場所だと思う」との考えをツイートしました。

また、マルタのマスカット首相も、Binanceの移転に対し歓迎の意をツイートしました。

意訳
Binance、マルタへようこそ!私たちは、ブロックチェーンベースビジネスと世界規模のフィンテック企業の管轄として、国際的な先駆者となることを目指している。

次に、Binanceと同じく香港に拠点のあった『OKEx』の事例を見ていきましょう。

OKExもBinanceと同じく、香港からマルタに拠点を移転させることを発表しました。

OKexの公式ブログによると、移転の背景は、ブロックチェーン産業を支えるための支援的な規制および技術基盤を積極的に構築していることと考えられます。

以下、公式ブログに掲載がされている、OKExのCEOであるChris Lee氏の発言です。

We look forward to working with the Malta government as it is forward thinking and shares many of our same values

OKEx Is Expanding To Malta Given Country’s Comprehensive Blockchain Initiatives – Help center

私たちはマルタ政府と協力し、(仮想通貨やブロックチェーンに対する)前向きな考え方と同じ価値観を共有することを楽しみにしています

さらにOKExは同ブログ内で、2018年の10月にマルタ政府がサポートする「DLT Delta会議」(DLT=Distributed Ledger Technology:分散型台帳)に参加することを表明しており、今後マルタでの活動が活発になることが予想されています。

ここまで、香港の大手仮想通貨取引所2ヶ所の移転について見てきました。

次に、ポーランド最大手取引所ビットベイ(BitBay)の移転についても、見ていきましょう。

2018年5月29日、ポーランド最大の仮想通貨取引所『BitBay』は、公式ブログで仮想通貨に友好的なマルタで事業を再開する計画を発表しました。

The activity of the BitBay exchange in Poland requires cooperation with Polish bank. Unfortunately the last Polish bank ready to provide bank services undertook unilateral decision to finish the cooperation with BitBay with the effect at the end of May. In those circumstances the continuation of providing high quality services by BitBay exchange in Poland is no longer possible.

BitBay - moving to Malta - Bitcoin exchange | BitBay

【BitBay公式ホームページでの発表:意訳】
ポーランドにおける活動には、ポーランドの銀行との協力が不可欠です。
しかし、協力を約束していた銀行が、5月末でBitBayとの提携を終了するという一方的な決定を下しました。
そのような状況では、ポーランドでのBitBayの質の高いサービスの継続はもはや不可能です

ポーランドの金融庁では、仮想通貨のリスクとねずみ講を関連付ける「アンチ仮想通貨キャンペーン」に資金を拠出したほか、中央銀行と協力し「仮想通貨ではお金ではない!」「仮想通貨への投資は危険です」と訴えかけるサイトを公開しています。

このことからも分かる通り、ポーランドは仮想通貨に対して厳しい姿勢をとっているため、Bitbayは仮想通貨に友好的なマルタに拠点を移しました。

ここまで、マルタの仮想通貨関連法案や、海外取引所移転の経緯について、事例とともに見てきました。

移転してきた取引所のほとんどが自国または他国からの厳しい規制を受けており、仮想通貨事業の進展に前向きな姿勢を示すマルタに新拠点を求めた経緯がお分かりいただけたかと思います。

国によって規制の程度はさまざまですが、マルタのように、海外の仮想通貨関連企業を積極的に受け入れている国は現時点では珍しいといえます。

各国の規制の度合いによっては、今後もマルタへ移転する取引所などの仮想通貨関連企業が増えるかも知れません。

今後のマルタと仮想通貨関連企業の動向に注目していきたいと思います。